結論
ホームページの制作会社が倒産しても、サイトは即座に消えるわけではない。サーバーやドメインは前払いした契約期間が残っている間は動き続けることが多く、本当の問題は数ヶ月後の更新時期に表面化する。最大のリスクはドメインが制作会社の名義・管理になっているケースで、名義と管理権限の所在によっては取り戻す手続きが難航する。倒産が起きてから慌てるのではなく、ドメインの名義・契約者・データとログイン情報の所在という4項目を平時に確認しておくことが本質的な備えになる。
はじめに: サイトは「すぐには」消えない。だから気づくのが遅れる
ホームページの制作を頼んだ会社が倒産した、あるいは連絡が取れなくなった。このとき多くの人が心配するのは「サイトが消えるのではないか」だが、実際には、サーバーやドメインの料金が前払いされている契約期間中はサイトが動き続けることが多い。問題はその先で、誰も更新料を払わなくなったドメインやサーバーが数ヶ月後に静かに止まり、そこで初めて事態に気づく、という時間差の構造にある。
これは他人事とは言い切れない。東京商工リサーチの発表によれば、ソフトウェア開発やホームページ制作などを請け負う「情報サービス業」の倒産は2026年上半期(1〜6月)に166件で、前年同期比18.5%増。上半期としては2017年以降の10年間で最多となり、5年連続で増加している。しかもその81.3%は従業員5人未満の小規模事業者だ。小さなお店や会社がホームページ制作を頼む相手は、多くの場合まさにこの規模の会社である。
「2026年上半期(1-6月)の「情報サービス業」の倒産は166件(前年同期比18.5%増)で、上半期では2017年以降の10年間で最多を記録した。」
— 東京商工リサーチ「2026年上半期の情報サービス業倒産」(2026年7月14日発表)
最大のリスクはドメイン。名義と管理権限がどこにあるか
倒産時に最も深刻な問題になりやすいのはドメイン(〜.jp や 〜.com といったサイトのアドレス)だ。ドメインには「登録者(名義人)」と「管理の窓口」という2つの立場があり、制作会社に取得を任せた場合、どちらか、あるいは両方が制作会社側になっていることがある。
.jpドメインの場合: 「指定事業者」という窓口の仕組み
「JPドメイン名における指定事業者は、ドメイン名登録者とJPRSの間に入ってドメイン名登録に関する窓口業務を行います」
— JPRS(日本レジストリサービス)公式サイト「指定事業者制度」
制作会社がこの指定事業者(またはその取次)としてドメインを管理している場合、別の管理先へ移す「指定事業者変更」の手続きには、変更元の事業者を通じた認証コードの確認が必要になる。つまり、窓口である会社が倒産して機能しなくなると、移管手続きの入口がふさがれてしまう。手続きの詳細や例外はJPRS公式サイトに定められているため、該当しそうな場合は早めにJPRSや移管先候補の事業者に相談するのが現実的だ。
.comなどの場合: 認証コードと登録者メールアドレス
.comをはじめとするドメインでも構造は似ている。管理会社(レジストラ)を移るには認証コード(Auth Code)が必要とされており、その発行や本人確認は登録情報に記載された登録者・メールアドレスを起点に行われるのが一般的だ。登録者情報が制作会社になっていたり、連絡先メールアドレスが制作会社のものだったりすると、移管の各ステップで本人性を証明できず、手続きが難航する。
更新されずに失効すると、取り戻せなくなることがある
誰も更新料を払わないままドメインが失効した場合、一定の回復期間(たとえば汎用JPドメインでは、有効期限後の一時停止状態になった月の1日から20日までが登録回復期間と定められている)を過ぎると廃止となり、その後は第三者が同じドメインを登録できるようになる。JPRSはこの点について明確に注意喚起している。
「第三者によるそのドメイン名の登録・使用を差し止めることはできません」
— JPRS公式サイト「ドメイン名の廃止に関する注意」(ドメイン名紛争処理方針に該当する場合を除く)
長年使ったドメインを第三者に取得されると、旧アドレス宛のメールや検索経由のアクセスがそのまま他人のサイトに流れることになり、実害は「サイトが消える」よりはるかに大きくなり得る。
サーバー契約とサイトデータ: 契約者でなければ動かせない
サーバーも同様に「契約者が誰か」が全てを左右する。レンタルサーバー各社は、契約者本人以外からの解約・名義変更・ログイン情報の照会に対して本人確認を求める規約になっていることが一般的で、契約が制作会社名義の場合、サイトの引っ越しに必要なデータの取り出しすら自力ではできないことがある。サイトの表示が生きているうちにデータ一式のバックアップを取れるかどうかが、復旧の難易度を大きく分ける。
また、WordPressなどのCMSで作られたサイトであれば、CMSの管理画面とサーバーそれぞれのログイン情報を自社で保有しているかも重要になる。「更新のたびに制作会社へ依頼していて、自社では一度もログインしたことがない」という状態は、倒産時に打てる手が大きく減ることを意味する。
今日確認できる4項目
- ドメインの登録名義: Whois検索(JPドメインはJPRSのWhois)で、登録者が自社か制作会社かを確認する
- ドメイン・サーバーの契約者と支払者: 請求書やカード明細から、誰の名義で誰が払っているかを確認する
- データとログイン情報の所在: サイトデータ一式のバックアップと、サーバー・CMSのログイン情報を自社で保有しているか確認する
- 契約書の引き渡し条項: 保守契約書に、解約・廃業時のデータおよびアカウント引き渡しの取り決めがあるか確認する
本質はシンプルで、「名義・契約・データ」の3つを自社側に置いておくことに尽きる。これから制作を依頼する場合は、ドメインとサーバーを自社名義で契約できるか、データとログイン情報を引き渡してもらえるかを、契約前に確認しておきたい。誠実な制作会社であれば、この質問を嫌がる理由はないはずだ。
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よくある質問
Q. 制作会社と連絡が取れなくなりました。サイトはすぐ消えますか?
前払いされた契約期間が残っている間は動き続けることが多い。ただし次の更新時期に誰も支払わなければ止まるため、猶予があるうちにドメインの名義・契約の期限を確認し、サイトデータのバックアップを取ることを優先したい。
Q. ドメインが制作会社の名義になっていました。取り戻せますか?
状況によって大きく異なる。登録者が自社であれば管理窓口の変更手続きで移せる可能性が高い一方、登録者自体が制作会社の場合は名義の移転が必要になり、倒産処理の状況にも左右される。一概には言えないため、JPRSや移管先候補の管理事業者に早めに相談するのが確実だ。
Q. 倒産に備えて、今できることは何ですか?
本文の4項目(ドメイン名義・契約者と支払者・データとログイン情報・契約書の引き渡し条項)の確認がそのまま備えになる。特にドメインとサーバーの契約を自社名義にしておくことは、どの制作会社と付き合う場合でも有効な保険になる。
このような課題を感じている方へ
小さなお店・会社のホームページを、制作から公開後の保守・更新まで定額で引き受けています。社内に詳しい担当者がいなくても、任せるだけで運用が回る状態を作ります。「今のサイトの契約や名義がどうなっているか分からない」という段階のご相談も歓迎です。